【コラム】試験片(テストピース)に対する熱処理について
- 公開日:2025年3月18日
- 更新日:2025年3月18日
試験片(テストピース)に対して硬度を求める場合は、試験片(テストピース)に対して熱処理を行います。熱処理は真空焼入れ、高周波焼入れ、焼入れ焼戻しなど、様々な種類があります。
真空焼入れ
真空焼入れは、真空環境下で行われる焼入れ処理です。酸化を防ぎ、クリーンな仕上がりが得られるため、表面がきれいに仕上がります。工具や精密機器に多く使用され、寸法精度を保つのにも適しています。当社ではSUJ2などの鋼材にしての真空焼入れ実績がございますが、基本的に焼入れ方法の指定がない場合は真空焼入れで熱処理を行うことが多いです。
高周波焼入れ
高周波焼入れとは、高周波の電流を金属表面に流して急速に加熱し、その後、冷却して表面のみを硬化させる処理のことです。表面硬度が高まり、耐摩耗性が向上しますが、内部は柔軟性を保つことができます。当社ではS45CやS55Cなどの鋼材に対しての高周波焼入れ実績がございます。
浸炭焼入れ
浸炭焼入れは、炭素を含む環境下で加熱し、炭素を表面に拡散させた後、焼入れを行って表面を硬化させる方法です。表面は硬く、内部は粘り強い性質を持つ部品を作ることができます。当社ではSCM420やSCr420などの鋼材に対しての浸炭焼入れ実績がございます。
窒化処理
窒化処理とは、金属表面に窒素を拡散させ、硬化層を作る処理です。窒素が拡散することで非常に硬い表面が形成され、耐摩耗性、耐食性、耐疲労性が向上します。比較的低温で処理でき、変形や歪みが少ない特徴があります。当社ではSUS304などのステンレス材、SUH3やS45Cなどの鋼材に対しての窒化処理実績がございます。
炭窒化
炭窒化は、カーボナイトライディングと呼ばれ、金属表面に炭素と窒素を同時に拡散させて硬化させる処理のことです。硬度や耐摩耗性、耐疲労性が向上します。焼入れによる歪みが少ないため、寸法精度が重要な部品にも適しています。当社ではS45Cなどの鋼材に対しての炭窒化実績がございます。
サブゼロ処理
サブゼロ処理は、焼入れ後に、冷却をさらに進めて極低温(-80℃~-196℃)にまで冷やす処理です。オーステナイトをマルテンサイトに変態させることで、残留オーステナイトを除去し、硬度と耐摩耗性を向上させます。当社ではSUJ3などの鋼材に対してのサブゼロ処理実績がございます。
焼入れ焼戻し
焼入れ焼戻しは、焼入れで金属を硬化させた後、焼戻しを行って適度な靭性を持たせる処理です。焼入れのみでは硬くても脆い特性になるため、焼戻しで硬度を調整し、靭性や強度のバランスを取ります。当社ではS50CやSUJ2などの鋼材に対しての焼入れ焼戻し実績がございます。
焼きならし(焼ならし)
焼きならしは正火とも呼ばれ、鋼材を適度に加熱し、ゆっくりと空気中で冷却する処理です。内部組織を均一化し、内部応力を除去して機械的特性を改善します。硬さや強度を適度に調整し、後の加工を容易にするために使われます。当社ではS45Cなどの鋼材に対しての焼きならし実績がございます。
球状化焼きなまし(球状化焼き鈍し)
球状化焼きなましは、鋼材中のセメンタイト(炭化物)を球状にして、柔らかく加工しやすい状態にする熱処理です。主に高炭素鋼に適用され、切削加工や塑性加工の際の加工性向上が目的です。当社ではSUJ2などの鋼材に対しての球状化焼きなまし実績がございます。
実績でご紹介した材料はあくまで一例です。「こちらの材料に対して浸炭焼入れはできるか」などのご質問などがございましたら、お気軽にお問い合わせいただければと思います。